●最後の審判 |
リチャード・ノース・パターソン |
★★★ |
ニューハンプシャーのある夏の月夜、22歳のブレットは、恋人ジェームズと出かけた湖畔でマリファナとワインに悪酔いし酔いを醒ますため子供時代から慣れ親しんだ湖に泳ぎに行く。酩酊した体で何とか岸にたどり着いたブレットは、そこで、本能的に自分達以外の他ににも誰かがいるという感覚に襲われる。「ジェームズ・・・」ブレッドは、急いで彼の元にもどったのだが、彼は、喉を引き裂かれその胸にはナイフが突き刺さっていた。ある理由から絶縁状態だった父から23年ぶりにブレットの叔母であるキャロライン・マスターズに連絡が入る。「ブレッドに厄介なことが起こった。帰ってきてもらわねばならない」姪であるブレッドの事件を手がけるためにキャロラインは、23年前、永久に去ったはずのニューハンプシャーに帰郷するこになる・・・ |
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400ページ以上、上下2段書き という読み応えのある法廷サスペンスの佳作。 姪が起こしたと思われる事件の弁護を軸にキャロラインが、なぜ?家族の下を去ったのかというマスターズ家にまつわるもう一つのストーリーを絡めて話が展開していく。前半は、リーガルサスペンスというより、地元の名士で判事であった父と弁護士事務所を開くことが将来の夢で、父のことが大好きだったキャロラインが、どうして家族を捨てたのかということが、父や異母兄弟、昔の恋人といった人たちとの会話から少しづつ明らかにされていくのだが、なかなかもどかしく読み進むのに苦労する。しかし、本書の中で描かれるあれだけ仲の良かった父・娘が、なぜ、現在の状況になってしまったのか?という興味から先を急ぐように読み進むことが出来た(笑)後半、予審に入り、裁判ものの本領発揮で、キャロラインと証人のやり取りになるのだが、この辺は、テンポも良くグイグイ引きこまれていく。本格的法廷サスペンスというより身内に起きた事件をきっかけに描かれる家族の愛憎劇ドラマで、サスペンス色は薄いが、登場人物の抱えてる問題と事件を上手く絡ませ最後まで楽しく読めた。 |